公開日：2019-12-25
2015年、メキシコ・Mexican Social Security Instituteの研究者らは、“経口マグネシウム補充は糖尿病予備軍および低マグネシウム血症の血糖状態を改善： 二重盲検プラセボ対照無作為化試験”に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。
目的
この研究は、成人糖尿病予備軍および低マグネシウム血症の血糖値低下における経口マグネシウム補充の有効性を評価しました。
方法
対象者は、低マグネシウム血症［血清マグネシウム濃度≤ 1.8 mg/dL (≤0.74 mmol/L)］で新たに糖尿病予備軍と診断された30から65歳計116人の男性と非妊娠女性で、4ヶ月間毎日1回30 mLの5%塩化マグネシウム溶液（マグネシウム382 mg相当）または不活性プラセボ溶液を摂取した無作為化二重盲検臨床試験としました。
主要なエンドポイントは、血糖値低下における経口マグネシウム補充の有効性を評価しました。
結果
ベースラインでは、サプリメント群とプラセボ群の個人間に身体測定および生化学的数値に有意な差異は認められませんでした。フォローアップ後に塩化マグネシウム摂取群とコントロール群を比較すると、空腹時（それぞれ86.9 ± 7.9と98.3 ± 4.6 mg/dL, P = 0.004）および負荷後の血糖値（それぞれ124.7 ± 33.4と136.7 ± 23.9 mg/dL, P = 0.03）、HOMA指数（それぞれ2.85 ± 1.0と4.1 ± 2.7, P = 0.04）およびトリグリセリド（それぞれ166.4 ± 90.6と227.0 ± 89.7, P = 0.009）は有意に減少し、HDLコレステロール（それぞれ45.6 ± 10.9と46.8 ± 9.2 mg/dL, P = 0.04）および血清マグネシウム（それぞれ1.96 ± 0.27と1.60 ± 0.26 mg/dL, P = 0.005)は有意に増加しました。計34人（29.4%）の血糖状態が改善されました（マグネシウム群とプラセボ群でそれぞれ50.8%と7.0%、P < 0.0005)。
結論
マグネシウム補充は血糖値を低下させ、成人糖尿病予備軍と低マグネシウム血症の血糖状態を改善することが示されます。
参考資料：
Guerrero-Romero F, Simental-Mendía LE, Hernández-Ronquillo G, Rodriguez-Morán M. Oral magnesium supplementation improves glycaemic status in subjects with prediabetes and hypomagnesaemia: A double-blind placebo-controlled randomized trial. Diabetes Metab 41:202-207, 2015. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25937055
doi: 10.1016/j.diabet.2015.03.010. Epub 2015 Apr 27.
【コメント】
このメキシコの研究者らは今回、4ヶ月間毎日1回30 mLの5%塩化マグネシウム補充（マグネシウム382 mg相当）により糖尿病予備軍および低マグネシウム血症の血糖状態を改善することを無作為化二重盲検臨床試験で示しました。
糖尿病及び糖尿病予備軍において低マグネシウム血症が多いと言われていますが、医師は一般的に血清マグネシウム濃度を測定していません。我国にも低マグネシウム血症者は相当いると思われるので、常日頃からの食事から十分なマグネシウムの摂取を心掛けて戴きたいものです。
このメキシコの研究者らDr. Guerrero-Romero、Dr. Rodríguez-Moránは2012年メキシコのメリダで開催された第13回国際マグネシウムシンポジウム（SDRM）の会長ご夫妻で、マグネシウムと糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、うつ病などに関し、精力的に研究を進め多くの研究論文を発表されています。2006年日本で開催された第11回国際マグネシウムシンポジウム（SDRM）に参加されました。MAG２１研究会のホームページでは、一部の研究論文を紹介して来ております。
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