公開日:2019-10-01
MAG21研究会のメンバーで東京慈恵会医科大学 客員教授 横田邦信先生の“生活習慣病発症要因としてのマグネシウムの重要性”に関する総説論文が、日本未病システム学会誌に掲載されたのでお知らせ致します。
この論文は、第25回日本未病システム学会学術総会 教育講演3にて横田先生が講演された内容を纏めたものです。
論文の内容を以下に列記します。
はじめに
マグネシウム(以下Mg)にはカルシウム(Ca)の蔭に長年隠れて来た負の歴史があり “The Forgotten Mineral(忘れられたミネラル)” とも言われている。しかし近年、健康維持・増進と長寿に不可欠な “アンチエイジングミネラル” としても漸く注目をされ、また食事性Mg摂取不足が生活習慣病の大きな発症要因のひとつとしても深く関わることも判明している。
本稿では、2型糖尿病およびメタボリックシンドローム(Mets)を中心にその発症要因としてのMgの重要性について述べる。
I. Mgとは
1. 生体における主な存在部位
2. 生体内における役割
i) 糖代謝(解糖系)におけるMgの関与
ii) インスリン分泌に対するMgの関与
iii) インスリン感受性に対するMgの関与
3. Mg不足と疾患の関係とその歴史
4. Mg摂取不足の現状と要因
5. Mg摂取不足が関与する病態/疾病
6. 血清Mg測定の現状と問題点
II. 糖尿病
1. 病態
2. わが国における戦後の2型糖尿病(推定)有病率と食生活の推移
3. 2型糖尿病の新たな発症要因
4. 仮説の検証
i) 臨床栄養疫学的研究
ii) Mg補充による介入研究
III. メタボリックシンドローム
1. 本来の概念
2. Mg不足とMetsの関係
おわりに
現代は無意識の内に食物繊維と共にMgの慢性的摂取不足(“新型栄養失調”)に陥っていることが2型糖尿病やMetsの新しい発症要因のひとつとして明らかになった。したがって日頃からMg摂取の重要性を認識し、わが国の伝統的な和の食材の良さを再評価し、Mgの十分な摂取を心掛けた“食育”が極めて重要である。Mgが世界の人々を救うことを願いつつ、今後、Mgに関する基礎的・臨床的研究が更に発展することを心から祈念する次第である。
文献
出典:
横田邦信: 生活習慣病発症要因としてのマグネシウムの重要性.日本未病システム学会25:22‐30,2019
【コメント】
マグネシウムはカルシウムの蔭に隠れて来た長い歴史があります。わが国の国民一人当たりのカルシウム摂取量は、厚生省(当時)が国民栄養の現状として戦後1946年来毎年調査報告し、厚生労働省が国民健康・栄養調査として2003年来毎年調査報告しています。一方マグネシウム摂取量は、カルシウムの調査報告より55年後の2001年から厚生省が調査報告を開始しました。カルシウムと比較し、マグネシウムはそれほど研究されていない“オーファン栄養素(Orphan nutrient)”です。この為、マグネシウムに関する国の認知が相当遅れたため国民の認知が更に遅れています。
マグネシウムは健康にとってとても重要な必須・主要ミネラルです。にも拘わらず、長年にわたりほとんどの医師がこの不可欠なミネラルの血中マグネシウムを測定することもしませんし、様々な臨床症状も見過ごして来たのが現実です。
マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候群)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、悪阻(つわり)、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・疫学的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。