ヒトにおけるマグネシウム: 健康と病気への影響

公開日:2019-05-16

2015年、オランダRadboud University Medical Centerの研究者らの“ヒトにおけるマグネシウム: 健康と病気への影響” についての総説を発表したので、その論文概要を紹介致します。

マグネシウム(Mg2+)は、人体にとって必須のイオンであり、健康と生活を支え維持するのに有益な役割を有しています。カリウムに次いで2番目に豊富な細胞内陽イオンとしてエネルギー代謝とタンパク質合成を含む600以上の酵素反応に関与しています。Mg2+の有効性が確認されていますが、患者の血清Mg2+値は一般的に測定されていません。

この総説はヒトの健康と病気におけるMg2+機能の概要を提供することを目的としています。 Mg2+は特に脳、心臓、そして骨格筋において重要な生理学的役割を果たしています。

さらに、Mg2+補充は、とりわけ、子癇前症、片頭痛、うつ病、冠状動脈疾患、および喘息の治療に有益であることが示されています。

過去10年間で、transient receptor potential melastatin type 6 (TRPM6)、クローディン16、およびサイクリンM2(CNNM2)の突然変異を含む、いくつかの遺伝型の低マグネシウム血症が解読されてきました。近年では、Mg2+トランスポーター1(MagT1)の突然変異は、細胞生存でMg2+の重要な役割を明白に示しているT細胞欠損との関連があります。

さらに、低マグネシウム血症は、利尿薬、上皮成長因子受容体阻害剤、カルシニューリン阻害剤、およびプロトンポンプ阻害剤などの薬物の使用結果で起こり得ます。

このレビューは、腸、腎臓、および骨におけるMg2+恒常性の調節と低マグネシウム血症を引き起こす可能性がある障害に焦点を当てて、過去数十年にわたるMg2+研究の広範囲かつ包括的な概説を示します。

参考資料:
De Baaij JHF, Hoenderop JGJ, Bindels RJM. Magnesium in Man: Implications for Health
and Disease. Physiol Rev 95: 1-46, 2015
https://www.physiology.org/doi/pdf/10.1152/physrev.00012.2014

【コメント】
本総説46ページの論文は2015年にPhysiological Reviews誌に掲載されたものです。
特にマグネシウム(Mg2+)は、人体にとって必須のイオンであり、健康と生活を支え維持するのに有益な役割を果たし、エネルギー代謝とタンパク質合成を含む600以上の酵素反応に関与していると報告しています。

今迄の医学書や科学文献でMg2+は、1980年代におよそ300、2000年代に350以上の酵素の補因子としてしばしば説明されて来ましたが過小評価されています。このオランダの研究者らによると、現在、酵素データベースには、Mg2+が補因子として働く600以上の酵素と、Mg2+が活性化剤として働く可能性のある追加200以上の酵素がリストされています。これらMg2+依存性酵素はMetaCyc(http://www.metacyc.org)に掲載されています。Mg2+をコアクチベーターとして必要な酵素の多くは生命に不可欠です。

Mg2+は健康にとってとても重要な必須・主要ミネラルです。にも拘わらず、長年にわたりほとんどの医師がこの不可欠なミネラルの血中マグネシウムを測定することもしませんし、様々な臨床症状も見過ごして来たのが現実です。

Mg2+の摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候群)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、悪阻(つわり)、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・疫学的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

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