多嚢胞性卵巣症候群女性におけるマグネシウム・亜鉛・カルシウム・ビタミンD同時補充が血糖コントロールおよび心血管リスクマーカーに及ぼす影響の臨床試験

公開日:2018-11-08

2017年、イランArak University of Medical Sciences, Kashan University of Medical Sciencesの研究者らが、“多嚢胞性卵巣症候群女性におけるマグネシウム・亜鉛・カルシウム・ビタミンD同時補充が血糖コントロールおよび心血管リスクマーカーに及ぼす影響の臨床試験” と題した研究報告をしたので、その論文概要を紹介します。

背景
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)女性の血糖コントロールおよび心血管リスクマーカーに対するマグネシウム・亜鉛・カルシウム・ビタミンDの同時補充の影響に関するデータが不十分です。この研究の目的は、PCOS女性において、血糖コントロールおよび心血管リスクマーカーに対するマグネシウム・亜鉛・カルシウム・ビタミンDの同時補充の影響を評価することです。

方法
無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験を行いました。対象は、年齢18~40歳のPCOS女性60人を無作為に2群に分け、マグネシウム100 mg、亜鉛4 mg、カルシウム400 mg、ビタミンD 200 IUのサプリメント(n = 30)またはプラセボ(n = 30)を1日2回12週間投与しました。血糖コントロールおよび心血管リスクマーカーを、試験開始時および試験終了時に評価しました。

結果
12週間の介入後、プラセボと比較してマグネシウム・亜鉛・カルシウム・ビタミンDの同時補充は、血清インスリンレベル(-1.9 ± 4.6 対 +0.4 ± 2.8 µIU/mL, P = 0.01)およびインスリン抵抗性評価の恒常性モデル(-0.4 ± 1.0 対 +0.1 ± 0.6, P = 0.02)が有意な低下をもたらし、ならびに定量的インスリン感度チェック指数の有意な増加(+0.01 ± 0.02 対 -0.0003 ± 0.01, P = 0.02)を認めました。

さらに、プラセボと比較してマグネシウム・亜鉛・カルシウム・ビタミンDの同時補充は、血清トリグリセリド(-26.5 ± 42.9 対 +8.9 ± 17.9 mg/dL, P < 0.001)、VLDL-コレステロール濃度(-5.3 ± 8.6 対 +1.8 ± 3.6 mg/dL, P < 0.001)、総コレステロール(-4.2 ± 30.7 対 +11.1 ± 28.4 mg/dL, P = 0.04)および総HDL-コレステロール比(-0.04 ± 0.6 対 +0.3 ± 0.9, P = 0.04)が有意に低下しました。

結論
全体として、この研究結果は、PCOS患者に12週間のマグネシウム・亜鉛・カルシウム・ビタミンDの同時補充が、インスリン代謝および心血管リスクマーカーに有益な効果を有することを示しました。

参考資料:
Jamilian M, Maktabi M, Asemi Z. A Trial on the Effects of Magnesium-Zinc-Calcium-Vitamin D Co-Supplementation on Glycemic Control and Markers of Cardio-Metabolic Risk in Women with Polycystic Ovary Syndrome. Arch Iran Med 20:640-645, 2017
http://www.aimjournal.ir/PDF/91_Oct017_005.pdf?t=636769270007569523

【コメント】
この研究は、無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験により、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)女性患者にマグネシウム・亜鉛・カルシウム・ビタミンDの同時補充が、インスリン代謝および心血管リスクマーカーに有益な効果を有することを示しました。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、インスリン抵抗性および脂質異常症を含む代謝障害と関係することが報告されています。これら代謝障害の多くは、当ホームページでご紹介している通り、十分なマグネシウム摂取により障害の軽減、予防が可能です。

マグネシウムは、女性に多く見られる便秘、片頭痛、骨粗鬆症、月経前症候群(PMS)、悪阻、のみならず多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)にも有益な効果を有することが明らかになりました。しかし、本研究にてマグネシウム・亜鉛・カルシウム・ビタミンDを同時補充した結果、どの成分がどの様な効果があったのかは不明です。

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

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