マグネシウム不足は歯周病と関連

公開日:2018-07-24

2005年、ドイツErnst Moritz Arndt University薬理学、歯科医院、歯周病学、臨床化学・実験医学、疫学研究所の研究者らが、“マグネシウム不足は歯周病と関連” と題した研究報告の論文概要を紹介します。

抄録
歯周炎の多因子性病因は、疾患の転帰に影響を及ぼす未知の要因が依然として存在しています。マグネシウムと歯周炎との関係は予備研究によって示唆されていますが、関連する臨床データは不足しています。そこで、人口ベースの分析でマグネシウムと歯周の健康との関連を調べました。

対象は、ポメラニアの東北ドイツ地域210,000人の住民登録からランダムに20~80歳4290人の被験者を選び断面的疫学調査を行いました。被験者を3つの年齢群(20~40歳、40~60歳、60~80歳)に分けました。歯周病リスク因子を記録し、血清マグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)濃度を測定し、それらを歯周病のパラメータと関連づけました。

マッチしたペアの研究で経口マグネシウム含有薬剤(緩下剤/制酸薬の服用、あるいは栄養補助食品の摂取)を使用した60人の被験者と使用していない120人を比較しました。被験者40歳以上では、血清Mg/Ca比の増加が歯周ポケット(≥ 4 mm)の減少(p <0.001)、付着喪失(≥ 4 mm)が少なく(p = 0.006)、残存歯数の増加(p = 0.005)と有意に関連していました。マグネシウム含有薬剤を使用した被験者は、使用しなかった被験者よりも付着喪失が少なく(p <0.01)残歯が多く認められました。

これらの結果は、マグネシウムの栄養補給が歯周健康を改善する可能性があることを示唆しています。

本文からの注釈:
血清マグネシウム濃度は原子吸光分析法にて定量。
血清マグネシウム基準値: 0.75~1.05 mmol/L(1.8~2.6 mg/dL)
*日本の血清マグネシウム基準値(キシリジル・ブルー法): 1.8~2.6 mg/dL

低マグネシウム血症0.75 mmol/L(1.8 mg/dL)未満が全参加者の35%で、高マグネシウム血症1.05 mmol/L(2.6 mg/dL)以上も認められました。
集団における血清Mg/Ca比の範囲は0.17〜0.71でした。

参考資料:
Meisel P, Schwahn C, Luedemann J, John U, Kroemer HK, Kocher T. Magnesium deficiency is associated with periodontal disease. Journal of Dental Research 84:937-941, 2005
http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/154405910508401012

【コメント】
この研究はマグネシウムと歯周病の関連を示し、マグネシウムの栄養補給が歯周健康を改善する可能性があることを示唆していることに意義があります。

近年、歯周病は心血管疾患、糖尿病などのリスク因子としても示唆されているので、日頃から十分なマグネシウム摂取が重要となります。

マグネシウムは健康にとってとても重要な必須・主要ミネラルです。にも拘わらず、長年にわたりほとんどの医師がこの不可欠なミネラルの血中マグネシウムを測定することもしませんし、様々な臨床症状も見過ごして来たのが現状です。

マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、PMS(月経前症候群)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、悪阻、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連しています。

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