果物摂取と2型糖尿病のリスク: 3つの前向き縦断的コホート研究結果

公開日:2014-04-29

果物摂取と2型糖尿病のリスク: 3つの前向き縦断的コホート研究結果



2013年、米ハーバード大学、英ケンブリッジ大学、ハーバード大学医学部、シンガポール国立大学の研究者らは、果物摂取と2型糖尿病のリスク: 3つの前向き縦断的コホート研究結果に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。



目的



    個々の果物が2型糖尿病のリスクに関連するかどうかを明らかにすることです。



デザイン



    前向き縦断的コホート研究



設定



    米国の医療専門家男女計187,382人。



参加者



 調査対象のベースラインで主な慢性疾患に罹っていなかった「ナースヘルス研究」(1984-2008)からの女性66,105人、「ナースヘルス研究II」(1991-2009)からの女性85,104人および「医療従事者フォローアップ研究」からの男性36,173人です。



主要評価項目



2型糖尿病の発症例で自己申告により判明および質問票によって確認。



結果



追跡調査3,464,641人年の期間中に12,198人の参加者に2型糖尿病を発症しました。
個人、ライフスタイル、糖尿病の食事性リスク因子について調整後、果物摂取量全体で週3回以上食べる毎に2型糖尿病の統合ハザード比(3つの調査を合わせた)は0.98(95%信頼区間0.96-0.99)でした。
個々の果物の相互調整によって週3回以上食べる毎に2型糖尿病の統合ハザード比は、ブルーベリー0.74(0.66-0.83)、ブドウとレーズン0.88 (0.83-0.93)、プルーン0.89 (0.79-1.01)、リンゴとナシ0.93 (0.90-0.96)、バナナ0.95 (0.91-0.98)、グレープフルーツ0.95 (0.91-0.99)、桃、プラムとアプリコット0.97 (0.92-1.02)、オレンジ0.99 (0.95-1.03)、イチゴ1.03 (0.96-1.10)、カンタループ(マスクメロンの一種)1.10 (1.02-1.18)でした。(注:太字は有意に減少を示します)
フルーツジュースについて同様の解析で統合ハザード比は1.08 (1.05-1.11)で有意に増加しました。2型糖尿病リスクとの関連性は個々の果物で有意差が認められました(すべてのコホートでP<0.001)。



結論



個々の果物摂取と2型糖尿病リスクの関連において異成分の存在が示唆されました。
特定の果物をそのまま食べる、特にブルーベリー、ブドウ、リンゴの消費量増加は2型糖尿病リスクの有意な低下と関連していました。フルーツジュースの消費量増加は2型糖尿病リスクの上昇と関連していました。



参考資料:
Muraki I, Imamura F, Manson JE, Hu FB, Willett WC, van Dam RM, Sun Q. Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies. British Medical Journal 347:f5001, 2013
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3978819/



コメント
この研究者らは、25年間にわたり18万人以上を対象に3つのコホート調査を解析し、一部の果物をそのまま食べると糖尿病の発症リスクが低下するのに対し、フルーツジュースを飲むと糖尿病リスクが上昇することを明らかにしたことに大変意義があると言えます。



一部の果物を食べていた人は、2型糖尿病の発症リスクが、特にブルーベリー最大で26%、ブドウとレーズン12%、リンゴとナシ7%、バナナ5%、グレープフルーツ5%低下すると報告しています。ブルーベリー、ブドウ、リンゴは、ポリフェノール(抗酸化作用をもつアントシアニン、クロロゲン酸、レスベラトロールなどの種類があり)を多く含み、体内での糖代謝にも影響し、糖尿病の発症リスクを低下している可能性があります。



逆に、リンゴやオレンジ、グレープフルーツなどのフルーツジュースを1日に1回以上飲んでいた人は、飲んでいなかった人に比べて糖尿病の発症リスクが21%高くなると報告しています。理由として、栄養成分が同様でも液体のジュースは固形の果物と比べ、胃から小腸への通過が早く、血糖および血中インスリン濃度に急速な変化をもたらすことが知られています。



また、それら果物、フルーツジュースの栄養成分量、ミネラル、特にマグネシウムの含有量を比較しました。果物にはカリウムが豊富ですが、バナナ、レーズンにマグネシウムが多く含まれています。



果物、フルーツジュースの可食部100g当たりの栄養成分量
五訂増補日本食品標準成分表 平成17年1月24日
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/tou...
10-151 果物ミネラル成分量 
Tr 微量。



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