血中および食事性マグネシウムと心血管疾患リスク: 前向き研究のシステマティック・レビューおよびメタ解析

公開日:2017-05-19

2013年、米国ハーバード大学公衆衛生学部、Brigham and Women’s Hospitalとハーバード大学医学部の研究者らが、“血中および食事性マグネシウムと心血管疾患リスク: 前向き研究のシステマティック・レビューおよびメタ解析”について報告をしたので、その論文概要を紹介します。

背景


臨床的低マグネシウム血症および食事性マグネシウムの実験的制限により、不整脈が増加します。しかし、致死性の虚血性心疾患(IHD)を含む心血管疾患(CVD)リスクに通常の血中濃度または食事性マグネシウム摂取量が影響を及ぼすか否かは不明です。

目的


システマティック・レビューおよびメタ解析を行って血中および食事性マグネシウムと心血管疾患(CVD)虚血性心疾患(IHD)、致死性虚血性心疾患(IHD)の発症率との関連を調査しました。

方法


2012年5月までの多言語の複数文献データベースを体系的に検索しました。線形用量反応関連に関してはランダム効果メタ回帰を用い、可能性のある非線形関連に関しては限定された3次スプラインを用いて評価しました。

結果


文献2303件のうち、16件の研究が適格基準を満たし、313041人の個人および心血管疾患(CVD)11995人、虚血性心疾患(IHD)7534人、致死性IHD 2686人の事象を含んでいました。
血中マグネシウム濃度〔0.2 mmol/L(0.48 mg/dL)増加する毎に〕は、心血管疾患(CVD)リスク〔RR 0.70(相対リスクが30%低下するという意味で以下同様です); 95%CI 0.56,0.2 mmol/L〕と虚血性心疾患(IHD)リスクの低下傾向(RR 0.83; 95%CI:0.75,1.05)および致死性IHDリスク(RR:0.61; 95%CI:0.37,1.00)と関連していました。
食事性マグネシウム摂取量(200 mg/日 増加する毎に)は、心血管疾患(CVD)と有意な関連は認められませんでしたが(RR:0.89,95%CI:0.75,1.05)、虚血性心疾患(IHD)リスクの22%低下と関連が見られました(RR:0.78,95%CI:0.67,0.92)。
食事性マグネシウム摂取量と致死性IHDリスクとの関連は非線形で(P <0.001)、低摂取量と比較して逆相関し許容限界の約250 mg/日(RR:0.73; 95%CI:0.62,0.86)まで確認されました。

結論


血中および食事性マグネシウムは、心血管疾患(CVD)リスクと逆相関し、心血管疾患(CVD)および虚血性心疾患(IHD)の予防におけるマグネシウムの潜在的役割を評価するための臨床試験が必要と言えます。


参考資料:


Del Gobbo LC, Imamura F, Wu JH, de Oliveira Otto MC, Chiuve SE, Mozaffarian D. Circulating and dietary magnesium and risk of cardiovascular disease: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Am J Clin Nutr. 98:160-173, 2013. doi: 10.3945/ajcn.112.053132.


http://ajcn.nutrition.org/content/98/1/160.long


【コメント】


この研究は、血中および食事性マグネシウムと心血管疾患(CVD)、虚血性心疾患(IHD)、致死性虚血性心疾患(IHD)の発症率との関連を調査するため2012年5月までに報告された文献2303件のうち、16件の研究を解析し、血中マグネシウム濃度が0.2 mmol/L(0.48 mg/dL)増加する毎に心血管疾患(CVD)リスクが30%低下、虚血性心疾患(IHD)リスクが17%低下、致死性虚血性心疾患(IHD)リスクが39%低下と確認されました。


さらに、食事性マグネシウム摂取量が200 mg/日 増量する毎に心血管疾患(CVD)と有意な差異とはならなかったものの、虚血性心疾患(IHD)リスクの22%低下と関連し、食事性マグネシウム摂取量と致死性虚血性心疾患(IHD)リスクの27%低下と関連しているというエビデンスを示されたことに意義があります。


当ホームページでは、以下のサイトで今までにマグネシウムと心血管疾患などとの密接な関連性についても解説してきました。


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