公開日:2010-03-29
マグネシウムの体内における吸収 -その1-
飲食物には様々なマグネシウムの化合物が含まれていますが、マグネシウムが飲食後にどこからどれ位吸収(取り込まれる)されるのかと聞かれることがあります。今回、マグネシウムの種類、マグネシウムの体内における吸収についてまとめました。
マグネシウムの種類
マグネシウムは、広い分野で使われています。医療現場では、緩かん下剤げざい、制酸剤(胃潰瘍の薬)、不整脈治療、切迫早産などの治療薬として、また、工業では、軽金属で耐熱性にも優れているため合金として航空機、船舶、自動車、農業機械、パソコン、精密機械、宇宙船など様々な用途にも利用されています。
マグネシウムにはたくさんの種類の化合物があり、古くから幅広い分野で様々な用途[医薬(医薬品原料・添加剤含む)、食品添加物、工業、飼料、肥料など]に利用されています。主な化合物と用途を示します。
マグネシウムの体内における吸収
マグネシウムは体内で作れないため飲食物から摂りますが、小腸から吸収され、余分なマグネシウムは腎臓から尿中・糞便中に排泄されます。マグネシウムの吸収は、マグネシウム化合物の種類と形状、摂取量、体内のマグネシウム貯蔵量、健康状態、体が必要とする状態などによっても異なります。
以下の内容は、アメリカ国立衛生研究所が公開しているMagnesium. Office of Dietary Supplements, National Institutes of Health, USAのウェッブ情報の内容を一部引用改変したものです。
マグネシウム化合物中のマグネシウム量とその生物学的利用能(Bioavailability)は、マグネシウムサプリメントの効果に影響します。生物学的利用能とは、食物、薬物、サプリメントのマグネシウムのどの位が腸から吸収され、最終的に体の細胞や組織で有効に使われるかを数字で表したものといえます。
● 1991年、米国ベイラー大学医療センター内科学の研究者らは、「食物とサプリメントからのマグネシウムの腸管吸収」に関する研究結果を報告しました(Fine et al. 1991)。
健常成人男性が標準的な食事と0、120、240、480、960mgの酢酸マグネシウムサプリメントを摂取した後の、マグネシウムの正味吸収を測定しました。
マグネシウムの吸収は摂取36~960mg増分と共に増えましたが、分別吸収は次第に減少(最小摂取の65%から最大摂取の11%)して摂取と吸収は曲線的な関係でした。
また、腸溶化(タブレット或いはカプセルの外層が胃を通過し、小腸で溶解します)塩化マグネシウムの吸収は、腸溶化が酢酸マグネシウムよりもはるかに少なく生物学的利用能は減少します。
● 2001年、米ニューヨークのVeterans Affairs Medical Center及びSUNYの研究者らは「米国の市販マグネシウム化合物の生物学的利用能」についての研究結果を報告しました(Firoz et al. 2001)。
この研究の目的は、市販のマグネシウム化合物4種類の生物学的利用能を測定し、無機より有機マグネシウム塩類がより吸収され易いかどうかをテストするものです。
ランダム化クロスオーバーデザインで健常成人男女16人に21 mEq (252mg)のマグネシウムを通常食時にサプリメントとして摂取し、尿中マグネシウム排泄の増加により生物学的利用能を測定しました。
マグネシウム化合物4種類:
無機マグネシウム塩類として2種類
① 酸化マグネシウム [Uro-Mag; 84.5 mg (7.04 mEq)/カプセル、1カプセル 3X/日 = 21.12 mEq/日]
② 塩化マグネシウム [Slow-Mag; 64.0 mg (5.30 mEq)/錠、2錠 2X/日 = 21.2 mEq/日]
有機マグネシウム塩類として2種類
③ 乳酸マグネシウム [Mag-Tab SR; 84 mg (7 mEq)/錠、1錠 3X/日 = 21 mEq/日]
④ アスパラギン酸マグネシウム [Magnesium aspartate; 65 mg (5.41 mEq)/錠、2錠 2X/日 = 21.64 mEq/日]
市販のマグネシウム化合物4種類を比較した研究結果から、吸収率は酸化マグネシウム4%、乳酸、アスパラギン酸と塩化マグネシウム9-11%でした。酸化マグネシウムの生物学的利用能は低く、塩化マグネシウムと乳酸マグネシウムは有意に高く同等の吸収率と生物学的利用能を示唆しました。
参考資料:
Fine KD, Santa Ana CA, Porter JL, Fordtran JS. Intestinal absorption of magnesium from food and supplements. J Clin Invest 88:296-402, 1991
Firoz M and Graber M. Bioavailaility of US commercial magnesium preparation. Magnes Res 14:257-62, 2001
Magnesium. Office of Dietary Supplements, National Institutes of Health, USA
http://ods.od.nih.gov/factsheets/magnesium.asp#ref
【コメント】
マグネシウムサプリメントは、化合物の種類と形状などによって腸管からの吸収に差があることが明らかにされました。
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