低血清マグネシウムと心血管死亡率

公開日:2008-11-10

低血清マグネシウムと心血管死亡率

2008年、ギリシャ、フランスとアメリカの共同研究者らは、慢性心不全の低血清マグネシウムと心血管死亡率の傾向についての研究結果を以下のように報告しています。

背景:

低血清マグネシウムは、致命的な心室不整脈を引き起こすかもしれません。しかし、低血清マグネシウムの死亡率に対する長期の影響と慢性心不全患者の病的状態は、比較的知られていません。

方法:

ジギタリス(強心剤)の臨床治験に参加し、1ヵ月後の血清マグネシウムのデータがあった通常の洞調律で慢性的収縮期および拡張期の心不全患者1569人について調査した。このうち、741人の患者は正常(>2 mEq/L)、828人は低い(≤2 mEq/L)血清マグネシウムレベルであった。36ヵ月間のフォローアップ中の入院と低マグネシウムの死亡率の影響は、コックス回帰分析を使って評価した。

結果:

全要因死亡数は、正常マグネシウム156人と低マグネシウム171人の患者であった(危険率、1.23、95%信頼区間、0.97-1.57、p=0.089)。心血管死亡率は、正常マグネシウム110人と低マグネシウム133人の患者であった(危険率、1.38、95%信頼区間、1.04-1.83、p=0.024)。全要因と心血管入院に対する危険率と95%信頼区間は、それぞれ1.18(0.99-1.42、p=0.068)と1.14(0.94-1.39、p=0.182)であった。

結論:

慢性心不全の傾向がマッチした人口において、血清マグネシウム濃度2 mEq/L以下の患者は、心血管入院との関係がなかったが、心血管死亡の増加と関係していた。

参考文献:

Adamopoulos C, Pitt B, Sui X, et al. Low serum magnesium and cardiovascular mortality in chronic heart failure: A propensity-matched study. Int J Cardiol (2008), doi:10.1016/j.ijcard.2008.05.006

MAG21研究会コメント:

低マグネシウム状態は不整脈の大きな原因になることは以前から知られていますが、慢性心不全患者で低マグネシウム状態が及ぼす影響をみても、低マグネシウム状態が大きく死亡率に影響することが明らかになりました。心不全の時に利尿薬を強心剤と共に投与することが多いのですが、抗アルドステロン系利尿薬以外では低カリウム、低マグネシウムを来たしやすく、より不整脈を起こしやすくなると考えられます。

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

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