公開日:2008-09-20
微量元素と女性
2004年、順天堂大学医学部の千葉百子先生は、微量元素と女性に関する興味ある総説を発表しました。
論文では、次の内容が報告されています。
はじめに
マグネシウム・カリウム欠乏に対する性差
1-1. 死亡率
1-2. 臓器中元素濃度とその恒常性維持機能
卵胞液中元素濃度
母乳中元素濃度
考察
筆者らは、タイ東北部の風土病であるライタイ[Sudden Unexpected Death Syndrome: SUDS(予期不能突然死症候群]の現地調査を行なったが、犠牲者は若い男性が圧倒的に多く、その要因としてマグネシウム(Mg)とカリウム(K)の欠乏が大きく関与していると考えられ、その生体影響には性差が大きいことがわかった。
更に、マウスを使った検証結果を報告。通常の実験室で使用する飼育用固形食にはMgが約2500mg/kg、 Kが約8000mg/kg含まれている。Mg・K欠乏飼料にはMg約25mg/kg、 K約40mg/kg含まれている。Mgのみ欠乏飼料にはMg約50mg/kg、K約5200mg/kg含まれている。
そこで、Mg欠乏飼料を雌雄のマウスに与えた群では開始1週間後から死亡する個体が出始め、3~4週間の間に全て死亡する。Mg・K欠乏飼料を雌雄マウスに与えた群では雄の死亡率が高い。Mg・K欠乏飼料を給餌し、飲料水に計算量のKを添加した群では、やはり雄の死亡率が高かったことから、性差に関してKが何らかの役割を果たすことが示唆された。
このMg・K欠乏実験では、恒常性機能維持能も生存率も雌の方が大で、生存率の性差にはKが関与するがその役割は不明である。
出典:
千葉百子: 微量元素と女性. Biomed Res Trace Elements 15(4):330-334, 2004
MAG21研究会コメント:
マグネシウム(Mg)とカリウム(K)の欠乏と生存率および性差との関係が明らかにされたことはとても興味深いものがあります。
MAG21研究会のホームページでも随所に記載しておりますが、生体内におけるMgの働きとして、生命活動の維持に必要不可欠です。また、MgとKは細胞内ミネラル、ナトリウム(Na)とカルシウム(Ca)は細胞外ミネラルとしてそれぞれ重要な働きをし、恒常性機能維持能(ホメオスタシス)が保たれています。細胞内MgとKの欠乏は、細胞外からのNaとCaの流入により細胞機能が崩れてしまい、細胞死すなわち生命維持活動の停止となります。
細胞内のMgは、約350種類に及ぶ酵素活性化、特にATPと呼ばれるエネルギーの産生、筋肉の収縮・弛緩あるいは拡張(血圧の調節、こむら返りなどに関係)、脂質代謝、神経興奮伝達、インスリン合成・分泌およびインスリン感受性の維持など多くの生理機能に不可欠です。
Mgは、健康・長寿に必須なミネラルだというのが理解戴けると思います。
健康・長寿に関心のある方は、日頃からマグネシウムが比較的豊富な穀類、緑黄色野菜などを摂る様な食生活の改善、適度な運動習慣を持ち、休養・喫煙・飲酒などの生活習慣を見直し、そしてストレスを減らすことが大切です。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。