公開日:2008-01-22
WHO報告書 『飲料水中の栄養素』-その1-
1957年、岡山大学の小林純名誉教授の疫学的調査研究では、日本各地の河川の酸度とアルカリ度と脳卒中の死亡率を調査し、酸性の地域では脳卒中の死亡率が高く、アルカリ性(マグネシウムやカルシウムが多い硬水)の地域では死亡率が低いとの論文を発表し、世界的な注目を浴びました。
小林教授の論文が発端で、1960年代から欧米では次々と追調査結果が発表されました(当サイト 2007.08.23 「女性及び小児とメタボリックシンドロームについて マグネシウムとカルシウム・・・」をご参照ください)。
先駆者らの調査結果を基に、世界保健機構(WHO)は、飲料水中の栄養素と健康に関する調査を開始しました。
これに関連し、2003年から栄養学、医学、科学の専門家によるエキスパートグループが、『飲料水中の栄養素』 WHO 2005年、『心血管疾患に対する硬水の予防効果の可能性』 WHO2006年の報告書をそれぞれ発表されています。これらの報告書は、WHOのホームページでも公開されています。
『飲料水中の栄養素』 WHO 2005年の報告書では、エキスパートグループがいくつかの結論を出しました。
ここでは特に、マグネシウムと健康に関連するいくつかのポイントをまとめます。
飲料水中の栄養素としてマグネシウムとおそらくカルシウムは、『硬水』を消費した人口の食事摂取量として最も有用である。
マグネシウムおよびさらにカルシウムの介入研究では、高血圧患者の血圧を下げる効果を認める。
飲料水からのマグネシウムとカルシウムの栄養素としての摂取によりヒトの健康に対する有害な影響がない。また、他の病気との有益な関係としては、脳卒中、腎結石形成、高齢者の認知障害、低出生体重児、小児の骨折、妊娠合併症、高血圧とおそらくガンなどがある。
硬水の飲料水がある程度心血管疾患のリスクを下げる有益な仮説はおそらく有効であり、マグネシウムがもっともおそらく貢献をしている。
(注意: 1957年来、日欧米の疫学調査では、硬水と心血管疾患死には逆相関があると論文発表されてきましたが、最近まで仮説とされてきました。)
実験的、臨床研究および疫学的研究からの情報では、マグネシウムの摂取量が推奨量より少ない場合、心血管疾患、脳血管疾患、あるいは高血圧で死ぬリスクが増す状態であるという仮説を支持します。
(参考文献)
Kobayashi J. On geographical relationship between the chemical nature of river water and death-rate from apoplexy. Berichte des ohara institutes fur landwirtschaftliche biologie 1957; 11:12-21.
Nutrients in Drinking Water. Water, Sanitation and Health Protection and the Human Environment. World Health Organization, Geneva 2005
(http://www.who.int/water_sanitation_health/dwq/nutrientsindw...)